最近の機械翻訳関連のセミナーやGreenTの無料説明会などで紹介している書籍です。去年の「Microsoft Office ユーザー感謝祭!」でMicrosoft Translatorの使い方を紹介したときにもこの書籍を紹介しました。
<目次>
日英翻訳での原文の修正例の紹介本
この書籍では、Yahoo!翻訳を使って日本文から英文を作成する方法が紹介されています。そのときに、日本文を「英語っぽい日本語=中間日本語」に書き換えることで、Yahoo!翻訳の出力を英語らしく変えようという提案がされています。
これ、まさしく機械翻訳でいう原文の修正=プリエディット(プレエディット)ということですね。この本では、中間日本語の書き方がさまざまなパターンで紹介されています。
この書籍との出会い
私は、去年の春頃に保険の相談をしていた担当の方からたまたまこの書籍を紹介してもらいました。当時、機械翻訳に関する仕事をしていることをその方に話をしたら、「機械翻訳のことならすごくいい本を持っている!」ということでこの本を紹介してもらいました。
まさか、と思って自宅でこの本について調べてみたら面白そうな内容でした。これは自分で買って読もうと思っていたら、この黄色い本が翌日くらいに自宅に送り届けられたのです。さすが保険のお姉さん。(後に自分で購入しました)。
私は自分ではこの本に出会わなかったと思いますので、この本を紹介してもらってこの方には感謝しています。翻訳者はおそらくこの本を手に取らないと思います。仕事で英語を使う人が英文を書くために手にする書籍でしょう。
原文の修正は不可欠
私は2016年末に参加したプロジェクトでGoogle翻訳をチーム内の情報共有で利用していたころから、使える訳文(英文)を出力するためには原文(和文)の修正は不可欠だと思っていました。日本語で議事録を作成して機械翻訳にかけたときに、日本語を工夫して書けばそこそこの英語になることを体感的に知っていたからです。
なので、この本の趣旨はよくわかりましたし、私が使っていた考え方もいくつか紹介されていました。
GreenTでの解釈
現在公開しているニューラル機械翻訳の支援ツール「GreenT」では、プリエディットを重要視していますが、それはこのプロジェクトでの議事録作成の経験があるからです。
この書籍では英語における無生物主語の利用に対する考え方が、「状況説明の日本語、主体者中心の英語」(P. 24)で紹介されています。私もこの考え方をプリエディットやポストエディットで使っています。
書籍には様々なヒント
この書籍では文章の構造や修飾の書き方、間違えやすい日本語表現、英語にならない日本語や文字など、さまざまな観点から具体例が挙げられています。翻訳者が英語表現を学ぶために読む類いの書籍ではないのですが、機械翻訳の癖を知る上では面白いヒントが満載だと思います。
付録として、演習問題が30題掲載されており、「日本語の原文」、「中間日本語」、「そこから出力された英文」、「英語ネイティブが修正した英文」と提示されたうえで、解説があります。書籍で使われているテクニックとも関連付けて説明されているので、実務での応用方法もわかってよいと思います。
なお、例文は2015年の機械翻訳の出力なので、現在のニューラル機械翻訳の出力とは異なります。ただ、この書籍の考え方は現在のニューラル機械翻訳でも使えると思います。
GreenTでのプリエディットの考え方
私は翻訳者がニューラル機械翻訳を使うことを想定してGreenTを開発しています。なので、この書籍での考え方とGreenTでのプリエディットの考え方は少し異なります。
私は訳文を頭に思い浮かべて、それに近づくように原文を最小限で修正するのがよいと思っています。あくまでも自分が欲しい訳文があって、それを出力するために原文をいじるのです。
なので、自分で訳文を考えずに、なんとなく原文をいじっているだけでは欲しい訳文を出力するのは難しいと思います。また、この書籍で紹介されている例のように大胆に原文を変えるのは適切ではない場面もあると思います。
コツがあるので、慣れるまではいろいろいじるしかないかと思います。この本はそういう試行錯誤の例が書かれているので、出力するイメージにあわせるための修正方法が参考になるのではないでしょうか。
また、「プリエディットをすればきれいな英語が出力される」なんてことが約束されているわけではないので、原文を修正する手間がかかりそうだと思ったら自分で訳文を入力したほうがいいと思っています。原文の修正方法に悩み続けるというのでは本末転倒になります。つい陥りがちですが(笑)。