翻訳者や専門家のためのニューラル機械翻訳の支援ツール「GreenT」をアップデートしました。
ユーザーのみなさまからのご要望にお応えし、丸括弧がある文の構文解析機能の強化と上書き翻訳機能の強化をしました。細かな使い勝手も改良しました。ぜひお試しください。
こちらからダウンロードしてください。
ご要望がございましたらぜひご連絡ください。
<目次>
機能追加
GreenT:括弧がある場合の翻訳機能の強化(Google、DeepL)
機械翻訳では、丸括弧内の文字列を正しく構文を解釈してた訳文を出力できない場合があります。特に、DeepL翻訳では明らかな誤訳が出力されることがよくあります。
このような場合でも正しく構文解析をして訳文を出力するようにチューニングしました。
原文
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止措置等につきましては、「建設業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を踏まえた建設現場やオフィスにおける感染予防対策の更なる徹底等をお願いしてきたところですが、このたび、令和3年4月23日に、1都2府1県(東京都、京都府、大阪府、兵庫県)を対象として、政府対策本部長より新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が行われました。 |
(引用:国土交通省の事務連絡を一部修正)
DeepL:2021年11月28日→赤文字箇所が繰り返されている
With regard to measures to prevent the spread of new coronavirus infections, we have been asking for more thorough infection prevention measures at construction sites and offices based on the "Guidelines for Prevention of Infection by New Coronaviruses in the Construction Industry" (hereinafter referred to as the "Guidelines"). On April 23, 2021, the Ministry of Health, Labour and Welfare (MHLW) issued the "Guidelines for the Prevention of Infection by the New Coronavirus in the Construction Industry" (hereinafter referred to as the "Guidelines"), and has requested that construction sites and offices take more thorough measures to prevent the spread of infection. On April 23, 2021, the Director-General of the Government Countermeasures Headquarters declared a state of emergency based on the Act on Special Measures against a New Type of Influenza in Tokyo, Kyoto, Osaka, and Hyogo Prefectures. |
DeepLでよく見かける繰り返しの誤訳です。訳文が妙に長かったり、同じフレーズが繰り返されることが多いので、内容を読むまでもなく誤訳だと判断できます。
GreenT(DeepL)→繰り返し箇所の解消
With regard to measures to prevent the spread of the new coronavirus infection, we have been asking for more thorough infection prevention measures at construction sites and offices based on the "Guidelines for Prevention of Infection by the New Coronavirus in the Construction Industry" (the Guidelines are hereinafter referred to as the "Guidelines). On April 23, 2021, the Director-General of the Government Countermeasures Headquarters declared a state of emergency based on the Act on Special Measures against a New Type of Influenza, etc., for Tokyo, Osaka, Hyogo and Nara Prefectures (tokyo, Kyoto, Osaka and Hyogo prefectures). |
明らかな誤訳は減りましたが、今回のような長文ではまだ明らかな誤訳があります。目視確認は当然ながら必要です。
なお、この機能は誤訳のありがちな原文を自動判定して実行されます。以下のチェックをオンにすると、丸括弧内のテキストを重視した訳文を強制的に出力できます。
以下の例文で比較してみます。2020年8月にも同じ例文で確認したことがあります。
(参考:【機械翻訳】DeepL翻訳とGoogle翻訳の性能を比較(その2))
原文
XYZ株式会社(以下、「甲」という。)と丸山株式会社(以下、「乙」という。)は、以下のとおり機密保持契約を締結した。 |
DeepL翻訳(2021年11月28日ネット無料版)
XYZ Corporation (hereinafter referred to as "A") and Maruyama Corporation (hereinafter referred to as "B") (hereinafter referred to as "A") and Maruyama Corporation (hereinafter referred to as "B") (hereinafter referred to as "A") and Maruyama Corporation (hereinafter referred to as "B") have concluded a confidentiality agreement as follows. |
現在でも明らかな誤訳をします。GreenTの[DeepL]タブでもそのままでは誤訳をしてしまいます。今後、この誤訳を予測して自動修正できるように開発を進めます。
(2021年12月7日) Ver. 1.8bにて自動修正機能を追加しました。
GreenT(DeepL:丸括弧重視)
XYZ Stock the company (hereinafter referred to as "a") and Maruyama Stock the company (hereinafter referred to as "b") have signed a confidentiality agreement as follows. |
このような場合には、[DeepL]タブで丸括弧重視を使います。この設定で出力する訳文では、構文を正しくとらえています。これが、丸括弧重視の翻訳の効果です。
「株式会社」が「Stock the company」となっていてかわいいですね。
(2021年12月7日) Ver. 1.8bにて、丸括弧重視機能を常時オンにするオプションを追加しました。
GreenT:原文を意味で区切り翻訳する機能の改良
これまで、「原文を意味で区切り翻訳する方法」がGoogle翻訳でのみ利用可能でした。この翻訳精度を改良しました。また、この機能をDeepL翻訳でも利用できるようにしました。
以下のチェックボックスをオンにしてご利用ください。
GreenT:上書翻訳機能の強化
[上書翻訳]タブで用語置換機能を使う場合に、QAチェックを自動では実行しないようにしました。
また、翻訳分野を特許に選択している場合には、特許翻訳でよく使う図面番号や請求項番号を自動で変換する機能を追加しました。(参考:翻訳分野の選択方法)
日英翻訳の図面番号は、指定した表示形式になります。
日英翻訳の請求項番号の変換です。
英日翻訳での請求項番号の変換例です。
そのほかにも、上書翻訳用にチューニングをしました。以前よりも使いやすくなりました。
GreenT:訳文挿入時に背景色を着色し、コメントを挿入する機能を追加
訳文を後で見直したい場合やコメントが必要な場合に、訳文挿入時にマーカーやコメントを追加する機能です。
[Setting]タブの以下のチェックをオンにして色を選択すると、[要検討]のチェックボックスが現われます。
たとえば、以下のように[要検討]をオン(ショートカットキーは[Alt]+[?])にして[挿入]ボタンをクリックします。
この時に表示されるダイアログボックスにコメントを入力します。
コメントの挿入が不要な場合は、空欄のまま[OK]ボタンをクリックするか、[キャンセル]ボタンをクリックします。
コメントの入力欄にコメントを入力後に[OK]ボタンをクリックすると、以下のように訳文が挿入され、選択した背景色で訳文が着色されます。
あとでこの要確認箇所に戻るには、[アドイン]タブの以下の矢印ボタンを使います。指定した色の箇所にカーソルがジャンプします。
[消しゴム]ボタンで、文書中の背景色をすべて解除できます。
GreenT:訳文をメモリに登録しないオプションを追加
繰り返し表現の場合、テキストメモリに登録したくない場合があります。その際には、[挿入]ボタンの右側にあるチェックボックスをオンにしてください。
ショートカットキーの[Alt] +[+]でもオン・オフを切り替えられます。
間違ってオンになったまま使わないように、チェックがオンになっている場合には下図のように[挿入]ボタンが着色されます。
PP:ルビを削除する機能を追加
[アドイン]タブの[PP]ボタンで起動する[Pre-Processing]ダイアログの以下のボタンで原文ファイルのルビを削除できます。
改善
GreenT:用語適用機能の修正(Google、DeepL)
用語が正しく適用できないケースがありましたので修正しました。
GreenT:DeepL翻訳の英日翻訳のA、B、Cのオプションの仕様変更
DeepL翻訳には、和訳時の訳文の出力を変えられるオプションがあります。
デフォルトを[A]として、翻訳を挿入したときや別のセグメントを選択したときに、設定が[A]に自動で戻るようにしました。
[B]と[C]は、[A]の訳文が好みではないときに別の訳文を試していただく目的で作ったオプションです。
通常は、[A]の訳文が優れていると思います。各自でご判断ください。
GreenT:QA機能の結果表示の改良
数字チェックで、数字が5桁以上の場合には桁区切りコンマを挿入するようにしました。これは、原文に桁区切りコンマがなくても表示されます。
数字の比較時にコンマが入っていたほうが目視で判断しやすいという声がいくつか寄せられましたのでこのようにしました。
GreenT:Google Translate Basicの利用を中止
Google翻訳では、Basic版の利用を中止しAdvance版のエンジンを利用するようにしました。
今までは前のバージョンも選択できましたが、今後はAdvance版でのみ開発を続けます。
バグ修正
- GreenT:[Style]タブの英訳時のフォントのリストの表示エラーを修正
- GreenT:アポストロフィのある英文の翻訳不具合を修正
- GreenT:バイリンガルファイルで書式保持オンの場合の誤動作を修正
その他
現在の[DeepL]タブでのDeepL翻訳では、html用の特殊文字(& や?など)が含まれる文を正確に訳せません。
今回のバージョンでは、html用の特殊文字が含まれる文では[DeepL]タブであってもGoogle翻訳で出力をさせていただきます。
今後の開発で、DeepL翻訳でも正しく翻訳できるように修正します。
(2021年12月7日) Ver. 1.8bにてDeepL翻訳でhtml用特殊文字に対処するよう修正しました。
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- GreenTのダウンロード