骨太な本です。
この本は読み応えがあります。
特許事務所に勤務していた頃は法律や実務面で学びがありましたが、フリーランスになってからは、特許の法律を自分で勉強しないと取り残されてしまいます。また、審査の流れなど細かいルールを忘れてしまいがちです。
そのような状況でこの本を手にしました。
過去の記憶を呼び起こすのに十分な情報がありました。
特許実務を経験したことがない方でも、わかりやすく解説されていると思います。
以下、おすすめポイントを列挙します。
参考文献がすごい(P.71)
特許翻訳のための参考文献が6ページにわたって列挙されています。
翻訳者としての心構え
本書のあちこちに、特許翻訳者としての心構えが書かれています。
また、翻訳の品質の管理方法やレベルを上げるための具体的な方法も書かれています。
第1章、第2章は特に何度も読み返したい部分です。
気が引き締まります。
審査の流れ(P.87)
特許実務をしたことがない人を前提に説明が書かれていると思います。その点が、一般の特許法の解説書と違うと思います。
以前も書いたことがありますが、外国の特許法の書籍は、「日本の特許実務を知っている」という前提で言葉が選ばれて説明されています。
そのため、翻訳者が外国特許法を勉強しようとしても非常にとっつきにくいという現状があったと思います。
その点、この書籍では、平易な言葉を使って説明がされているので読みやすいと思います。
逐語訳についての解説(P.94)
PCT外国特許出願の翻訳文における「逐語訳」について、都市伝説(!)も含め諸説あります。
この気になる逐語訳について、明快に書かれています。詳しくは本書でご確認ください。
「内容を再生産する」という翻訳の視点も、なるほどと思います。
補正って何?という方へ(P.99)
判例が紹介されています。特許実務で何が行われているのかを理解するうえで、判例を読むのは重要だと思います。
誤訳の取り扱いについて(P.108)
誤訳の訂正方法について関連法と判例が紹介されています。誤訳の訂正ができる場合とできない場合があります。
このことを知っておくと、特許事務所の方がいう「誤訳訂正」の意味や事務所ごとのアプローチを少し理解できると思います。
記述のスタイルについて(前記、当該、該って何?とか)(P.156)
意味ありげな記述のスタイルがありますが、それには法的な根拠があるのでしょうか?
日本語、英語特許明細書内の独特の記述について、その意味(もしくは、まったく無意味であること)が解説されています。
これも読んでみてすっきるすること間違いなし(笑)。私も、特許事務所にいたころは先輩に教えてもらっていました。
特許実務を経験したことがない方の場合、すべてを理解するのは難しいかもしれませんが、ヒントがたくさん載っていることは間違いありません。
ぜひ手に取って、何度も読み返されることをお勧めします。
私もこれから何度も読むことになると思います。