英語の本にとどまらず、「考えるヒントの本」だと思います。
英語学習者の方だけではなく、実務家として英語を使う方々にお勧めの一冊です。
英語を生業にしている翻訳者の私たちのにとっても、「英語学習の楽しさ・安心感」の罠にはまらず、プロとしてどう英語と距離を保つのか(愛しすぎて近づきすぎない距離感)についてのヒントも得られるのではないかなと思います。
グロービッシュのことご存知ですか?
Wikipedia によれば、「ネイティブ英語圏ではない地域での共通言語としての英語」であり、「『言語では無』く、『道具』」など、ビジネス用の道具としての英語のことを意味しているようです。
さて、そのグロービッシュをビジネスの現場で駆使して実績をあげられた著者の書籍が上記の、「グロービッシュ実践勉強法」です。
これからグロービッシュって必要になることが多くなるでしょうね。
著者のメッセージの一部です(目次から抜粋)
- 中学英語で、グロービッシュはマスターできる
- 語彙の強化より、「Excuse me?」といおう
- 見知らぬ単語が出てきても自分の土俵なら見当がつく
- 高校の英文法を押さえれば、ネイティブレベルも理解できる
- 英語力不足は専門用語で補う
- あえて専門書を教材にしてしまう
- 「聴く」のは「読む」の応用編
- 書ければなんとかなる時代
- 話すときには、カタカナ英語で十分
- ワンパターンの話し方でも伝わる
- ニッチなスキルを磨く
- コミュニケーションの“主役”になる
などなど。。。興味深いですよね。
さて、
- 発音をネイティブ並みに。
- 文法は正しく。
- ボキャブラリーを豊富に。
これを目指すと、英語学習は苦痛になりますね。私も高校時代の体験からよくわかります。
私は英語を苦労して勉強したという記憶がほとんどありません。
高校時代、FMでかかっていたAmerican Top 40で好きなアーティストのインタビューを聞き取るためにひたすら繰り返しインタビュー部分を聞いていたことがあります。
アメリカの女性のペンフレンド(数十名いました)に毎日のように手紙を書いていたことがあります(疑似恋愛?)
洋楽の詞の発音を知りたくて、辞書をひいてカタカナでCDの歌詞カードに発音を書き込んだこともあります。
地元にネイティブの友人ができたときには、相手の言うことを聞き取りたいから毎日英語の教材テープを3~5時間くらい流し聞きしていたように思います(風 呂場、犬の散歩中、授業中、通学途中、下校途中・・・)。そのわりにリスニング力は伸びなかったけど、苦痛に思ったことは一度もありません。
自分が言うことがネイティブの友人に伝わることを知っていたので、発音の練習は全くしたことがありませんでした。というか、大学の英語サークルに入ってから指摘されるまでは、自分の発音はいい方だと勘違いしていました(笑)。
好きなアーティストの英文記事を雑誌で読んでいました。
大学受験前や留学用のTOEFL試験前は、ボキャブラリー不足をおぎなうために、英単語をひたすら暗記していました。これは苦労の思い出。
ちなみに、たくさん英語に触れていると文法が理解できますので、結果として文法は案外得意だったりします(論理的に説明できませんが、テストでは正解を回答できます)。
何が言いたいかというと、目的があってその手段として英語を使うのであれば、英語を学ぶというプロセスは喜びになったりします。面倒で苦しい学習のプロセスではないんですよね。
あまり気乗りしない目的(仕事上、やらなければならない)のであれば、この本の著者が提唱するように英語の学習は割り切って最小限におさえて、自分の専門性(仕事の内容)での勝負に時間をかけたほうがいいですよね。
著者は、本書で「英語はExcelと同じで、単なる"道具"」と言っていますが、そうかも、と思います。
発音の勉強に多くの時間かけても、仕事で評価されることってあまりないように思います。
なぜなら仕事では常に問題解決が求められていて、そのプロセスにおいて発音がよかったかどうかはあまり関係ないですよね(発音がよければいいですが、あまりよくなくても、目的は達成できますね、という意味であり、発音の練習が無意味だとは思っていません)。
私にとってはわかりにくい発音で堂々と話をするヨーロッパ系の留学生・大学教授を、米国留学中にたくさんみましたが、別にそれで問題ありませんでした。
友人は私の英語の発音になれてくれましたので、だいたい意思疎通はできました。最初は、聞き直されるたびにショックをうけていましたが、途中から私も聞き直されることに慣れましたし、相手も私の発音に慣れました。
去年バングラディシュに旅行 にいったときも、行きによったタイ空港のホテルに電話したときには、相手が英語をしゃべっていると気づくまでに時間がかかりました。それくらいよくわからない。
それは私たちのリスニング力がないのではなくて、相手の発音に慣れていないだけなんですよね。
でも、自分が悪いのかな?なんて思いがちなのが私を含む日本人のメンタリティみたいな気がします。
タイ人の英語が聞き取れなかったときには私もへこみましたが、留学時代を思い出して、「私はわるくない」というスタンスで電話を続けました。
そのときには、何度も何度も言い直してもらいまして(まったく悪びれることもなく)、落ち着いてホテルの予約を済ませることができました。
だいたい、その方の発音が聞き取りにくいし電話での会話はそもそもわかりにくいですから、言い直してもらうことに罪悪感をもつ必要なんてまったくありません。
ちなみに、私の発音も聞き取っていただけなかったので、何度も何度も言い直すことになりましたが、それはそれでいいんですよね。私もネイティブじゃないですからね。
このように、英語をつかったコミュニケーションというのは、「慣れ」や「気持ちの持ち方」の作用が大きいと経験上思います。
あと、本気度。本心かどうか。相手が聞きたい内容を発しているかどうか。そういうところです。発音や文法ではないですね。
そんな私が「なんとなく思っていたこと」+「ビジネスで役立つ英語の学習方法」を詳しく書いてあるのがこの本なんです。
というわけで、書籍紹介ではなくて、私の英語体験談になりました(笑)。
英語の学習法法については、具体的な方法が提案されていますから、ぜひ本書をご覧ください。私も高校時代に試みたスラッシュリーディングについても記載があります。
あと、解説中にある著者の日産自動車の財務部でのエピソードは非常に興味深いですよ。
フランス人の上司と、どうコミュニケーションをとったのか?はなるほど、と思う工夫がいっぱいです。
英語を勉強すること以外の手段で壁を乗り越えて、自分の意志を伝えているところがミソですね。
そういう意味で、実務で壁にぶつかったときの乗り越え方のヒントがつまった本でもあります。
本書の後半は、キャリア形成についてのアイディアも書かれていまして(しかも、それは英語にたよったキャリア形成ではない!)、非常に興味深いですね。
さて、仕事の専門性を高めるために英語で情報収集することを提唱した英語本(自己啓発のニュアンスもあり)としては、以下の本がありますね。
私も、この本を読む以前から(留学中、留学後)、海外のビジネススキル・自己啓発系のオーディオブックを聞いていましたので、興味のある内容を英語で聞いて・読んで、そのプロセスで英語を学ぶことの価値がわかります。
あと、翻訳者の方々は以下の本も読まれたことがあると思いますが、やっぱりヒントがつまっています。
以前、私も読後感想文を書かせていただいたことがあります。
いずれも、英語をツールとして使うことがそれぞれの切り口で説明されています。
おすすめです。