【書籍紹介】語学力ゼロで8ヵ国語翻訳できるナゾ(その4)

2010年3月28日

最後に「語学力ゼロで8ヵ国語翻訳できるナゾ どんなビジネスもこの考え方ならうまくいく」のまとめです。

私は、この本自体は、「仕事の考え方」についての本だと思っています。

「翻訳」という仕事のやり方を具体例にして、「仕事への考え方」が説明されています。

で、私は、この本が、以下の2つのきっかけになると、特許翻訳業界が盛り上がって楽しいなと思っています。

1つは、翻訳者が、新しい翻訳方法(目から鱗の方法!)を知ることで、発想の転換方法や新しいビジネススキルを身につけるきっかけになること。

2つめは、翻訳をしたことがない一般のビジネスパーソンの方々が、翻訳、特に特許翻訳分野に参入するきっかけになること。

著者の水野さんはこのように書いています。

翻訳業界には根拠のない話やあいまいな言葉がいかに多いか実感できたと思います。そのひとつひとつにおいて本質を見極めることができれば、あっというまに実力をつけることができます。

つまり、この業界ですでに働いている人にとっては、一歩ぬきんでるヒントが入っているし、この業界の外の方には、業界の常識を破って、一気に実力をつけることができるヒントが入っているのです。

いいチャンスと思いませんか?

翻訳者にとって

私は特許翻訳者であるため、著者が本書で紹介する事例の一つ一つが非常にわかりやすく感じられます。

そのために、著者が提案している「細分化」や「並行処理」の意味を具体的にイメージできると思います。

翻訳をしていないビジネスパーソンにとって

この本で紹介されている事例や考え方は、「ハック」や「仕事の効率化」に興味がある方であれば、比較的なじみがあるものかもしれません。よって、この考え方に慣れており、さらにご自身の実務でその考え方を応用されているのであれば、翻訳者としての成功も非常に近いところにいるのかもしれませんね。

新しい考え方が入ってくると、翻訳業界も盛り上がってくるのではないでしょうか?

一緒に情報交換したいですね。

この本の面白いところ。

それは、ブログと連動しているところ。

一般に、ブログを通じて読者と著者とが直接情報交換をすることはあると思うのですが、本書の場合には、書籍で書ききれなかったことをブログで公開したり、内容をさらに深めたりしているところが楽しみどころ。

たとえば、こちらに、補足記事が多数紹介されています。

また、こちらの、ワイルドカード置換の例は、深掘りした内容が記載されています。

このように、考え方だけにとどまらず、具体的に用いることで効果が実感できるものも多数公開されているところに、本書のおもしろさがあると思います。

で、ギターの教則本との共通点?

この「読めば上達!! ギタリストの盲点」も、ギターの教則本にもかかわらず、弾き方よりも考え方重視の本なのです。

最近、学生時代に始めたギターを、また練習し始めたのですが、そのために手にした本書は非常にすばらしい!!

仕事に応用できる学びが入っています。

質問って大切

この本で投げかける質問に、以下のようなものがあります。

「そもそもプロ・ギタリストの定義とは何でしょうか?」(P.7)
「良い演奏と悪い演奏」(P.27)
「しかし、何を根拠に私たちは、上手下手を判断しているのでしょうか?」(P.35)
「音楽理論は必要か否か」(P.47)

「語学力ゼロで・・・」と同じような質問のオンパレードです。

練習方法として、「合理的な練習」を定義した後に、細分化されたそれぞれの要素について説明が加えられる。

しかも、それらの細分化された要素を「同時に」学ぶことが合理的な練習であるとしています。

音楽理論についても、すべてを覚えることは無理という前提で話をしています。

その必要性について「議論するのであれば、『どの程度必要か』を題材にすべきです。」(P.49)と切り口を設定しています。

そして、「わからない事が出てきた時に、学習すればよいと思います。」(P.50)と書いています。

そりゃそうだ。。。ついつい音楽理論を知らない自分を正当化しようとして「音楽理論なんていらない!」と叫んでしまってません?

ギターのオーディションと翻訳のトライアル

本書のP.10にオーディションで起用されるギタリストの例が書かれています。

これは、「語学力ゼロで・・・」の著者のブログにある、翻訳トライアルについて書かれたこちらの記事にちょっと似ていますね。

また、P.25にオーディションでの審査官からのコメントの受け取り方が紹介されています。

「君の弾いた前半のあれは、かっこいいね。でも、後半○○○スケールになってからが、かっこわるかった・・・」

これを、

「君の弾いた前半のあれは、僕は好きだった。でも、後半○○○スケールになってからが、僕の趣味には合わなかった・・・」

と書き換えて解釈するという提案がされています。

つまり、好き・嫌いは本人の趣向の問題であって、オーディションのギタリストのに強要すべきものではないという考え方です。

よって、コメントをもらった本人が考える点も違ってきますよね。

詳細は、P.26をご覧ください。

これって、翻訳のトライアルで使える考え方じゃないでしょうか?

または、私たち翻訳(学習)者が通信講座や翻訳学校でのコメントの解釈で使える考え方じゃないでしょうか?

私はトライアルを受けたことはありませんが、一般に書かれている翻訳業界の書籍や自身の翻訳通信講座の受講経験から、同じようなことを感じます。

つまり、採点者の好きな書き方(かっこいい書き方)を強要されうる状況になるという面で、同じですよね。

私自身は通信講座でのコメントにへこんだ時期もありました。

よりよい商品を提供するためには、他者からいただく評価を上手に受け取ることは、大切なことですね。

思考のくせ

「ギタリストの盲点」では、練習時間がないからギターがうまくならないという悩みに対して、どうやったら短い時間で練習できるのか説明されています。

さらに、限られた練習環境の中で努力してプロになった人の話も紹介されています。

さらには1日1分しか練習できない場合の効果的な練習方法まで紹介されています。

アドバイスは、常に具体的な行動方法で締めくくられているんです。ここが面白い。

私たちは自分の「思考のくせ」によって縛られているところってあると思います。

私なんかは、「できない理由」を考え出すことは非常に得意です。

でも、ここで自分の「思考のくせ」を意識的に「できる理由」を考えることに向けられたら、今までとは違う行動になるんじゃないかな?と思わずにはいられません。

苦境の中でプロになったギタリストの話なんて、いいですよ。(P.80)

「語学力ゼロ・・・」でも「思い込み」としてP.20から紹介されていますが、こういう固定観念に縛られない発想ができると仕事のやり方って変わっていきますね。

論理的な思考の大切さ

彼は、非常に論理的に物事をとらえていると感じました。

そして、それが彼のギタリストとしての成功とギター講師としての成功に繋がっているのではないでしょうか?

翻訳に、音楽家の仕事の考え方をそのまま応用できるとは思いませんが、言葉を定義したり、細分化したものに対処する方法や、繰り返し練習(作業)の徹底的な合理化などは、通じるものがあります。

また、ギターを学ぶ方であれば、著者の事例の意味がよくわかると思いますので、「仕事へ使える考え方」につなげることも可能かも。

ちょうど、「語学力ゼロ・・・」と同じようなニュアンスの本に出会ったので、ついでに
紹介してしまいました。

私は、こういう感じの「考え方」の本が好きですね。

ただ、私のように、読んでいるだけでは、一向にギターは弾けるようにはなりませんので、ご注意を。

-書籍紹介
-, ,