「わかりやすい日本語」の指針をお持ちですか?
私が2005年に特許事務所に入所したときに、日本語の書き方の指南書として「日本語の作文技術」を知りました。
この本はかなり有名なので、特許業界以外でも翻訳業界でもよく知られていると思います。
例文をいくつも読み進めてルールを理解していく本ですが、そのルールを忘れてしまうことがあります。また、文章を読むのが途中でおっくうになってしまうかも知れません。
<目次>
手軽に取り組める日本語の指針
今回紹介する冊子は、産業日本語研究会が発行する「特許ライティングマニュアル」です。
本冊子には、日本語ライティングの指針が非常にシンプルに示されています。
サイトには、以下のように本冊子が紹介されています。
一般財団法人日本特許情報機構(Japio)は、2007年から、知的財産、特許翻訳、情報工学等の専門家の皆様のご協力のもとで、「産業日本語」の研究・普及活動を行っております。その活動の中で、「言い換えルール」の抽出を行いました。この言い換えルールを一般にも親しみやすく理解しやすいものとなるよう、8つのカテゴリー、31のルールに汎用化したものを、「特許ライティングマニュアル(初版)」として、2013年6月に発行しました。
初版発行以来、特許や翻訳に携わる方だけでなく、各方面から多くの関心をお寄せ頂き、ダウンロード版を含め1500部以上が一般に普及しているところですが、内容の重複、ルールの適切性、ルールの分かりやすさなどといった点から改善の余地がありました。
そこで、内容の見直しを行い、7つのカテゴリー、27のルールに再構成し、併せて、例文の追加・修正を行いました。この特許ライティングマニュアルは、人による特許明細書作成実務をガイドし、コンピュータによる特許ライティング支援機能を実現する基礎となるものです。本書をご活用いただくことにより、特許明細書をはじめとする産業・技術文書の作成実務の一助となれば幸いです。
特許文書における日本語ライティングの指針で、一般的な技術文の作成において役立つヒントが分類されています。
(画像出典:ひと目で分かる特許ライティングマニュアル)
わかりやすさに関する論理的な裏付けは「日本語の作文技術」の方が理解しやすいと思います。しかし、わかりやすく書き直すテクニックを確認するだけであれば本冊子が即効性があるように思います。
翻訳をするときの視点にも有効
日英翻訳をする際に、原文の日本語で書かれていない言葉を補って訳文を作成していると思います。
たとえば、日本語で省略された主語や目的語を補うことがあると思います。また、係り受けが長い文章を区切って複数の文章に修正することもあります。
このように文章を区切って接続詞でつなぐ方法や言葉の補足方法の例が、この冊子にいくつも紹介されています。
英文にしづらい日本語を脳内日日翻訳する際に役立つのではないでしょうか。
翻訳のしやすい日本語
このマニュアルに掲載されている言い換えルールは、「文章の理解容易性・明晰性」および「機械翻訳の容易性」の2つの観点から作られているそうです。
その通りのルールだと思います。非常に価値のある提案です。この冊子で提示されている変更例を使えば、機械翻訳のしやすい日本語を書けると思われます。
そして、「機械翻訳をしやすい=人間も翻訳しやすい」と理解していいと思います。
特許技術者の方々が特許明細書を書く際に、翻訳しやすい日本語を書くためのヒントになると思います。
ぜひダウンロードを!
冊子をサイトからダウンロード出来ます。特許技術者のみなさまも特許翻訳者のみなさまもぜひ一度ご覧ください。
もちろん特許に関係のない方々にも役立つ内容だと思います。