【執筆】JTFジャーナル 2018年11/12月号

2018年11月15日

先日公開された日本翻訳連盟(JTF)のJTFジャーナル2018年11/12月号に、日本知的財産翻訳協会(NIPTA)の「NIPTA特許機械翻訳研究会」の研究内容報告を書かせていただきました。JTF翻訳祭で発表した内容とほぼ同じです。研究会のほかのメンバーの方々も書かれています。ぜひご覧ください。

私はニューラル機械翻訳(NMT)そのものでは特許の新規出願の翻訳では使えないと思っております。また、ニューラル機械翻訳で訳した明細書全体を最初から見直して修正するというポストエディットは手間がかかりすぎて大変だと思っています。

私は新規出願の翻訳で翻訳者の役割が大きいと思います。機械翻訳を使うのであれば、ポストエディットとして翻訳者が最後の仕上げで介入するよりは、機械翻訳で訳文を1文ずつ作成し、その作成の都度、翻訳者が修正するほうが表現の統一をしやすく内容の確認もしやすいと思います。また、特許翻訳のクレームと実施例の表現の統一のために翻訳メモリのようなCATツールを利用するのもよいと思います。

機械翻訳は「Garbage In, Garbage Out.」そのものだと思います。変な形で出てきた訳文データを処理するのは手間がかかります。そうならないように原文データを修正したほうが訳文データの修正の手間が少ないはずです。また、機械翻訳をできないような原文は人間が都度訳せばいいのです。「どんな文章でも機械翻訳ができるはず」という過度な期待も柔軟に機械翻訳を使う上で足かせになると思います。

いい訳文が出てきたらラッキー!程度の気持ちでつきあってもいいかなと思います。

このような発想から開発したのが今回の記事でも紹介しているGreenT(グリーンティー)です。現時点では公開の準備中ですが、動画は用意いたしましたのでJTFジャーナルの記事とあわせてご覧ください。

動画(GreenTのコンセプト、操作方法など)

なお、内容の確認用の翻訳であれば、機械翻訳の訳文をそのまま使ってもかなり便利だと思います。たとえば、技術者が競合他社の技術内容をざっと読むという用途であれば訳文の完璧さは求められないと思うからです。外国語のままで海外の論文や特許文献を読むのはつらいですが、日本語になっていればたとえ誤訳が含まれているとしてもおおざっぱに内容を把握できると思います。特許のように図面があればなおさらです。

なので、機械翻訳については用途を考慮した上で有用性を評価する必要があると思います。

GreenTは通常の人手による翻訳と同様に、原文を読み文脈にあわせて訳文を作っていく過程を想定したツールです。今まで私がしていた翻訳工程に機械翻訳を組み込むとこうなるのではないか、という私なりの提案です。

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